Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
やがて次兄は新しい妻をつれて姫路病院につとめるようになった。その間に私が幸いに高等学校に入ったので、旅費を送ってくれ、骨休めに郷里へ帰って来いといってくれた。京都で勉強していた弟静雄も招ばれて、兄弟三人が姫路の次兄宅で楽しい何日かを送った。その時、かつて辻川の拙宅で、母の手伝いをしたり、私ら兄弟にお灸をすえたりしたおたかという婆さんが、井上の家事を手伝ってくれていた。このお婆さんは、じつに苦しい生活をして来たが、体も大きくりっぱで、よく働く上に忍耐力の強い、模範的婦人ともいえる女であった。自分の夫に別れ、娘と二人の息子を育ててきた。姑を見送ってから、二人の息子にも大工や何か職を身につけてやったが、その息子たちもまた早く世を去ってしまった。後に孫が残ったのをよく世話をしていたが、悲劇といってもこれくらいかわいそうな女はなかった。
このおたかが、家事を手伝いながらじっと新しい兄嫁の様子を観察していたらしい。何かいいたくてたまらないのに、新しい時代に対して反抗してはいけないという気持があるものだから、我慢強く辛抱していたが、ごく僅かだけ自分の感想を私らに洩らすのであった。