Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
ところが不思議なことにはちょうど同じ頃から、私等三人の小児が夜分は母につれられて、この旅館へ風呂をもらいに行くことが始まった。きょうは御客が一人とか二人とか、又は誰も入られません、どうか御はいりにという使が来る。うちにも風呂場はあるのだが、ずっと小さくて黒くて、こちらの方が湯も水もたっぷりして居る。いつも家の父が外へ出て留守の時に限って居たが、後になって考えて見ると、つまりうちが貧しくて薪を買う銭を倹約する必要があることを、向うが同情して助けてくれたので、それには彼等夫婦が心から御礼をするような、何か為になる忠言をして居たのでは無いかと思う。
詳しく説明すると却って小説見たいになるが、母も若くて健全であった頃には、斯ういう同情ある指導を実行する技能をもって居り、彼等は又愛して居りながら、何かの動機から強く激昂する習癖があったのを、夙く見抜いて巧みに説き付ける策を施したものと私は考えて居る。
或はそれは身びいきに過ぎた解説という人があるかもしれぬが、その前後の事情を考えても今以て私は斯く信じて居る。勿論同じような発作はなお幾度かあり、泣きながら女中が喚びに来て、又かえと言いながら出かけて行ったことも多かったが、行けば必ず発作が少し鎮まり、暫く時を掛けるとやさしい顔になって御辞儀する。