Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
母は体が弱かったし、父は亡くなるまで天保銭が八厘であることを知らないでしまったという気楽人であったから、受取人はまだ九歳くらいの子供ではあるが、私より外になかったのである。
為替が届くと、母は腹巻を作ってくれて、その中に金を入れて腹に巻くようになどと、くどくどと注意を与えて家を出すのだが、北条と辻川の間、郡境の所に大きな池が三つほどあり、淋しい、追剥ぎの出そうな所であった。北条で現金を受取って北条の外れまで来ると、あの地方で有名な家が一軒だけあり、榁の木の生垣がめぐらしてあるので、私たちは「ブロンガワ」と呼んだのであるが、その家の前でしばらく遊んでいた。
そこは淋しい個所にさしかかるちょうど手前であるから、子供心にここで誰か頼りになりそうな通行人を待っていたわけである。やがておじさんかおばさん、あるいは二人連れがやって来ると、その後からちょこちょこついて行った。金額は十二、三円であったろうか。幾度か北条までの道をそのため往復して神経をつかったので、十歳の時、北条へ移ることが決った時は、嬉しかったことを覚えている。北条には郵便局があるからであった。