Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
例えば上野の図書館へ本を読みに行くにしても、母から十銭だけもらって行くというような、子供みたいな人であった。天保銭だけは八文だということを知っていても、波銭の文久銭は二文であったか三文であったか、はっきりしないという旧時代の人であった。今まで母にささえられてきたが、突然の死にあってすっかり弱り、外出もせずにただじいっとしているだけになってしまった。
私も大分体を痛めたので、みなにすすめられて銚子の海岸に三週間近くも行っていた。すると家から、「もういくらかよくなったのなら、ひとまず帰って来ないか。お父さんがその後少し元気がなくなったから」という手紙が来て、びっくりして大急ぎで帰ってきた。事実父はすっかり弱って、間もなく母の後を追うように亡くなってしまった。母の死から二カ月もたっていない九月五日のことで、年は六十五歳であった。丈夫な人だったが、母の死によってすっかり弱り、早く死んでしまったのではないかと思う。
こうして両親の急逝にあって、私のそれまで抱いていた計画もすっかり変ってしまった。例えば人並にえらくなって、両親を馬車に乗せて上げたいとか、もし万一兄に不幸があった時は、両親や甥姪たちのために、医者にでもなって世話をしてやろうかという気持も、時がたつに従い、だんだんうすれてしまった。