Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
それでは赤穂の浜の、海水浴の人の行く宿屋までときめて、朝はゆるりと発ったが、昼過ぎ早くそこに着いた。見晴しのよい広間があいているのみか、湯まで沸いているのですぐ入った。久しぶりに一人になって、寝転んで本など見ていると、思いがけなく宿の主人が入って来て辞儀をした。「今日は何とも珍しいことがござります。つい今のさきまでこの座敷においでた神戸のお客様が、昨晩からしきりにあなたのことをお尋ねになっておりました。どうやら県庁のお役人の親御様のようで、署長さんや警察の人たちも尋ねてこられて、色々とあなたのお身元について評議してゆかれました」という。それは大変なことだと眼を円くしたが、話の後先きをとり集めて考えると、事件の成立がごく手軽に解けた。ちょうど二番目の娘が学校を出て、時折、縁談の下話のようなものを聴かされるころであった。父の郷里が播州と聴いて、まず赤穂にやって来たのはよいねらいであり、おかげでまた私も楽に間違いの因が判った。赤穂の町の内外には有力なる柳田家が多く、一方にはまた柳田美郷のような美しい歌を残した歌人もいたが、私の生家は松岡で、この一統とは何のゆかりもない。