Japanische Klassiker mit Furigana
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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
Lesen Sie 故郷七十年 (こきょうしちじゅうねん) von 柳田 国男 (やなぎたくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 257.350 Zeichen · 507 Bildschirme
戦争がひどくなって遠くに行けなくなり、住居の近所ばかり散歩していたところ、原町田という所のバスの停留所で、法被を着た私と同年輩の爺さんと、三十分ぐらい話をしたことがある。ゴムの長靴をはいた変った風采の人であった。陸川という人で、生れは越後の高田在で、信州で育ち、兵役少し前に東京へ出て、請負師をして非常に成功した。家作も大分あり、楽に暮しているという。子供は六人とかあって、皆それぞれ一人前になって家を持ったから、新たな六軒の一族の「あたしは先祖になる」というのであった。その話をきいて、私は播州の伊藤一族を思い出した。私の家から分れたに違いないのに、私の家の分家でもなく、一族でもない。つまり分れた人が御先祖になったのである。当主の曾祖父を福渡藤兵衛といい、明治の初めに苗字を「松岡」とつけず「福渡」とつけた。辻川から二里位川上に、福ノ泉という部落があり、そこの伊藤家というわけであった。
その家は私の先祖でもある。私の六代前に勘四郎という人があって、その夫婦の孫に当るお類というのが福渡へ嫁に行き、何か訳があって、男の子一人をつれて松岡に帰って来た。母親はそのまま里方で亡くなったが、息子は母方の医者にならず、町の商家に奉公してよく働き、資産を作って、辻川で商売をはじめたのである。