Classici giapponesi con furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Leggi 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 191.184 caratteri · 379 schermate
狂女ながらも逢えた嬉しさは、正気の女と変わりないが、うっとりとした潤んだ眼で、お浦は家治の顔を見詰め、握られている手に力をこめ、家治の言葉の一句一句に、それを締めそれを緩めた。
そうして、
「上様、上様」
とばかりいった。
恋いこがれていた心持ちを、ただその言葉とその動作とだけで、告げ知らせるより他にはない、無策の無心の狂女だからであった。
シャンデリアの光に髪に差してある、銀簪のピラピラが、燐火を燃やしているように見えた。
「誰もが本当のことを話してくれない、だからわしにしても誰の耳へ、本当のことを話していいか見当がつかなくて困っているのだよ」
穏やかといえば穏やかに見え、意気地がないといえば意気地がないようにも見える、眼尻の垂れた細い眼に、家治は涙さえ溜めていた。
女と酒と不摂生と、抑圧された精神とで、家治の脳は久しい前から、低下を告げているのであった。
口の端には泡が吹かれていた。
「越中へ頼むのがいいのだが、越中とばかりは逢えぬからのう。誰かがきっと側にいるのだよ。……だからお前へ頼むより他は……」
酔いも廻り切っているらしかった。
感情ばかりが先に立って、理性が失われているようでもあった。