Classici giapponesi con furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Leggi 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 191.184 caratteri · 379 schermate
九
ややあって冬次郎は口を切った。
「名は服部織江といわれる。桑名侯名代の服部半蔵殿の、ご一族の娘ごじゃ。……」
ここでまた冬次郎は沈黙したが、
「実はな、わしとしてはこのような婦人が、あの駕籠にいようとは思わなかったのじゃ。……わしは全然別の女が、あれにいるものと想像し……ままごと狂女! ままごと狂女! それがいるものと想像しそれであの駕籠を奪ったのだが――いやままごと狂女については、いずれ詳しく話すとして……この婦人を偶然救ったことについても、わしは大変いいことをしたと、今では喜んでいる次第じゃよ。……織江殿は不幸なお身の上での……さあ織江殿そなたの口から、ここにおられる戸ヶ崎殿へ、不幸なお身の上をお話しなされ」
こういって織江を見返った。
織江は低く頭を下げた。
九
「妾の父事服部石見、六十歳の老年ではござりますが、壮年より武術を好みまして、小野派一刀流では奥義を極め、三十歳の時皆伝となり、主家におきましても三指と綽名され、三本の指に数えられましたよしにて、老年になりましても時々参殿、大殿様や若君などの、お相手いたしましてございますが、何んと申しても老年のことゆえ、万事控え目控え目にいたし、目立たぬようにいたしおりました。