Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ちけむりてんめいじん

血煙天明陣

国枝 史郎

Leggi 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 191.184 caratteri · 379 schermate

Aozora Bunko

三

が、忽然浮かんだは、伊藤一刀斎の和歌であった。

――切りむすぶ、太刀の下こそ、地獄なれ、身を捨ててこそ、浮かぶ瀬もあれ。――

(身を捨ててこそ!)

と眼をつむり、

(切られて突こう!)

と飛び込んだ。

三

とたんに又助の声がした。

「しめた! 女め捕えられたぞ!」

ハーッとなった範之丞、突きの切っ先とどかなかった。

「未熟者め、それで討てるか!」

ユラリと左へ体をかわし、九十郎は嘲笑った。

体をかわされたので行方が見えた。

十数間の彼方にあたり、若侍どもに手取りにされ、担がれたのであろう織江の姿が、芒の上に高く上げられ、月光に漂っているかのように、宙を渡って行くのが見えた。

「妹ヨーッ」

と思わず呼び、範之丞はそっちへ走りかかった。

「逃げるか!」

と喚く九十郎、遮ってその前に立ち塞がった。

「敵を目前に置きながら、女に心引かされて、意気地のない奴、逃げる所存か!」

「何を! ……汝エーッ」

とはずむ呼吸――もう範之丞は呼吸さえはずみ、腕にしこりさえ来かかっていたが、

(身を捨ててこそ!)

と同じイキ! 眼をつむって飛び込んだ。

「遅い!」

とまるで稽古の態度だ、九十郎は今度は右へユラリと、体をかわし、刀はそのまま、頭上に高く振り冠ったまま、前歯を見せて苦く笑った。