Classici giapponesi con furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Leggi 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 191.184 caratteri · 379 schermate
風流のお話し致しましょう。ただし……」
といって来た貝十郎は、眼ににわかに光を持たせ、
「悪戯が余り過ぎますれば、懐中から十手出ましょうよ」
「まず坐れ」
「…………」
問答の間に女勘助が、こっそり敷いて行った座布団の上へ、袖口の細い無垢の小袖に、黒竹打ちの紐をつけた羽織、新形の小紋の中着の下に、白糸まじりの黒八丈の下着、大通の姿をフワリと乗せた。これがどうして安永、天明に渡り、牧野大隅守や曲淵甲斐守、名代の町奉行に歴仕して、悪漢からは鬼神のごとくに、市民からは菩薩のごとくに、恐れられ敬われた名与力、鬼十二神と思われようか。
相手の腹を探り合うかのように、二人はしばらく黙っていた。
庭からは夜風に木の葉の片寄る、サラサラという音が聞こえ、部屋の中には脇床に置かれた、藤四郎作らしい田家の形の、小形の香炉から香の煙りが、一筋立って揺れていた。
「貝十郎、用件は何んじゃ?」
ややあって冬次郎は穏かに訊いた。
「すでに済みましてござります」
貝十郎も穏かに答えた。
「用件が済んだ? いつの間にな?」
「ご門外にて済みました」
「…………」
「戸ヶ崎氏が警護して、駕籠一挺行くのを見かけ、用件済んだと存じました」