Classici giapponesi con furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Leggi 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 191.184 caratteri · 379 schermate
無言で貝十郎は一揖した。
香の煙りが流れて来て、二人の間に漂った。庭からはまたも夜風に片寄る、落葉の音が幽かに聞こえた。
「その源内の考案で、武蔵野の一所へ田沼めは、屋敷を造ったということじゃの」しばらくたって冬次郎はいった。「『東路に、ありというなる逃げ水の、にげかくれても、世を過ごすかな』俊頼卿のこの和歌から、暗示を得て源内は設計したそうじゃの」
「さよううけたまわっておりました」
「稲荷堀に広大の屋敷を造り、引き移ったは最近のこと、信州浅間の麓あたりに、他人の名義で自己の山屋敷を、造ったという噂も聞いておる。それにも飽き足らず歌枕の地、風光絶佳の武蔵野へ、異様の屋敷を造るとは、田沼の専横尋常でないぞ!」
「…………」
「そちその屋敷へ行って見たことあるか?」
「いまだ落成いたしませねば、参ったことはござりませぬ」
「数日中に落成と聞いた」
「その際お招きにあずかりますれば……」
「行く気か?」
「さあ、今より何んとも……」
「噂によればその屋敷、逃げ水のごとく遠くより望めば、巍々堂々と聳えて見えるが、近寄って見れば消えて見えず……不思議な屋敷だということじゃの」