Classici giapponesi con furigana
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ちけむりてんめいじん
血煙天明陣
国枝 史郎
Leggi 血煙天明陣 (ちけむりてんめいじん) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 191.184 caratteri · 379 schermate
と、不意に熊太郎の横を、ほとんどすれすれに擦りぬけて、それまで尾行けて来た町娘が、前の方へ歩み出たが、振り返ると頬へ靨をつくり、熊太郎へ笑いを投げ、今度は足早に歩いて行った。
熊太郎は女を見詰めた。
と、清三郎へ囁くようにいった。
「あの男を尾行けてみよう」
「あの男? どの男で?」
怪訝そうに清三郎は訊いた。
「銀簪を頭へくっつけ、赤と黒との井桁模様の帯を、だらりに結んでいるあの男だ」
清三郎は呆れ返り、
「先生ありゃア女ですよ」
「またお前小言が聞きたいと見えるな」
「…………」
「ほんとうの女が歩く時に、それも小走りに走る時に、ああ肩が水平でいるものか。女装をした男だよ。それも相当武術などに、たしなみのある男だよ」
その時女は山田屋と書かれた、暖簾が微風に揺れている商家の、角を曲がって右へ反れた。
「見失ってはならぬ、それ走れ」
――で、二人は曲がり角まで走った。
女は先を歩いていた。
半町あまりも歩いたであろうか、また女は家の角を、今度は左の方へ曲がった。
二人も従いて左へ曲がった。
こうしてごみごみした下谷の裏町の、露路や小路をあちこちと通って、娘が行き二人が追い、小半時あまりも時刻を経た時、槇の生垣に取り巻かれ、広い庭に厚く植え込みが繁り、その中に萱葺きの屋根などを持った、三棟ほどの風雅の家が、ひっそりと