轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
若い女は、髪の毛こそ、根が切れて乱れていたが、まだ生きてるように、化粧の白粉や口紅が浮き立っていた。紫いろになった唇をチラと噛んで笑っているのである。
「オオ、この女は見たことがあるぜ」
「さっき浜べで、貝殻をひろっていた女じゃないか」
「そうだ、あの宿屋に泊っている女だ」
そこへ報らせに行くまでもなかった。むこうから四、五人して駈けて来るのがその宿屋の者らしく、中に、吉岡清十郎の顔も見える。
ここの人だかりに、さてはと息を喘いて来た清十郎は、
「おっ、朱実だ」
真っ蒼になって――しかし人前を憚るように、棒立ちに恟んでしまった。
「お侍、おめえの連れか」
「そ、そうだ」
「はやく、水を吐かしてやんなせえ」
「た、たすかるか」
「そんなことをいってる間に」
と、漁師たちは、権叔父と朱実と、両方のからだに分れて鳩尾を押したり、背をたたいたりした。
朱実は、すぐ息をふき甦した。清十郎は宿舎の者に負わせて、人目から逃げるように旅舎へ帰って行った。
「権叔父よ……権叔父よっ……」
お杉隠居は、さっきから権叔父の耳へ顔をつけたきり泣いていた。
若い朱実は、蘇生したが、権叔父は老体でもあるし、すこし酒気もあったので、まったく絶息したものとみえる。