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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
「――聞えたか。小猿を連れた洟垂れ武士、舷へ出ろ、舷へ」
すると、船のうちで、
「わしのことか」
何を先でいっても答えるなといいあっていた客のうちから、突然、こう答えて舷に立った若者があった。
「おうっ」
「いたな」
「小僧め」
その影を認めて、陸の七名は眼を剥いたり、指さしたり、近ければ水を渡ってもやって来そうな気勢を示している。
物干竿とよぶ大太刀を背中へ負って、前髪の人影はじっと立っていた。すぐ足もとの舷を打つ水明りが、尖っている歯を白く見せた。
「小猿を連れている前髪の青二才とあれば、わしより他にないが、各※(二の字点、1-2-22)は何者だ。稼ぎのない野武士たちか、それとも、腹の減った旅芸人か」
声が川を渡って来ると、
「なにっ」
七名は岸へ顔を揃えて各※(二の字点、1-2-22)歯ぎしりを噛みながら、
「吐かしたな、猿つかい奴」
悪罵は、順々に、その口々から飛び出して、川面を打った。
「身のほど知らずが、今に吠え面掻いて、謝るなよ」
「われわれをなんだと思う。今の口は、吉岡清十郎門下のわれわれと知ってか、知らずにか」
「ちょうどよい、手をのばして、その細首を洗っておけ」