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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
と、すこし茫然としたように小次郎はいう。
「其許の兄弟子、伊藤弥五郎どのから」
「お、一刀斎どのとご懇意か」
「ついこの秋頃まで、一刀斎どのは、白河の神楽ヶ岡の辺に一庵をむすんでおいであった。屡、こちらよりも訪れ、先生も時折、四条の拙宅へ立ち寄って下されたりなどして」
「ホウ! ……」
小次郎は笑靨を作って、
「では満ざら、貴公ともただの初対面ではない」
「一刀斎どのは何かというと、よく其許の噂をなされていた。――岩国に、岸柳佐々木と称する者がある。自分と同様に、富田五郎左衛門のながれを汲み、鐘巻自斎先生に師事した者で、同門の中では一番の年下ではあるが、行く末天下に自分と名を争う者は彼より他にはあるまいと――」
「だがそれだけで、この咄嗟にわしを佐々木小次郎とは、どうしてお分りあったか」
「まだ年ばえもお若いことや、人柄はこうこうなどと一刀斎どのから伺っていたし、また其許が、岸柳と号されている謂れも詳しく承知しているので、その長剣を自由になさるさまを見た時すぐ、もしやと胸に泛かんだので、当て推量にいってみたのが測らずもほんとをいいあててしまったわけ」
「奇だ! これは奇遇」