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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
六
六
二度めの壺の酒も、いつの間にか底を干していた。梅軒も飲むには飲んだが、武蔵へ強いたほうが多かった。武蔵は自分の酒量を思わず越えて、例のないほど酔った。
「女房、おれたちは、奥へ寝よう。ここの夜具を客人にあげて、奥へ寝床を敷いてくれ」
彼の女房は、いつもここで眠る掟とみえ、梅軒と武蔵が飲んでいる間に、客に関わずすぐそばへ夜具をのべて、嬰児と共にもぐり込んでいた。
「客人も、つかれが出たらしい、早く寝むようにして上げねえか」
先刻から梅軒は客に対して急に親切に変っていたが、なぜ、ここへ武蔵を寝せて、自分たちの寝床は奥へしけというのか、女房は良人のいいつけが解きかねたし、また、折角足の暖まったところを起きるのが嫌さに、
「お客は、岩公と一緒に、道具小屋へ寝てもらうことになっているがな」
「ばか」
寝床からいう女房を睨んで、
「それは、客にもよりけりだ。黙って、奥へ支度して来い」
「…………」
寝衣すがたで、女房は奥へぷいと入って行った。梅軒は眠っている嬰児を抱き取って、
「お客、穢い夜具だが、ここなら炉もあるし、夜半に喉が渇けば、湯茶も沸いている。ゆっくりと、この蒲団へ手足をのばしたがいい」