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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「いやいやそれには及ばない。宮越、越えれば福島じゃ。これまで隙のないものが、これからありよう筈はない……乾児衆にもおさらばおさらば」
声と一緒に未練もなく、武者之助の一団は引っ返した。
「さあこの間に一走り!」と如来衛門の声を合図に駕籠は山路を飛ぶように走り、真夜中に福島へ入って来た。
右門の指図で一団の者は、花村邸の正門を除けて裏門の方へ廻わって行った。
「ご開門ご開門」と忍び音に、右門は扉を手で打った。
しばらくあって人気がして、邸内から忍びやかの声がした。
「どなたでござるな? 何用じゃな――かかる深夜に門を叩くは火急の用でもござってか?」
父、甚五衛門の声である。
右門はあまりの懐かしさに、
「父上!」と我知らず声をあげた。「父上、私でございます。あの、右門奴でございます」
「何、父上だと? これは意外!」
邸内の声は冷ややかである。
「父と呼ばれる伜なんど、この老人にはござらぬて……」
「いいえ私でございます! 右門奴がおわかりになりませぬか」右門は焦心って云うのであった。
「右門じゃと? ハテな、その右門も仔細あって、勘当した上は、父と云っても赤の他人じゃ」