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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
砂を蹴立てて一散に
しかし邸内は寂として人のいるような気配もない。
裏門に向かった一群も、正門の勢と同じようにただ空鬨を上げるばかりで討って入ろうとする者もない。こうして見す見す時刻は経ち、夜は次第に更けて行った。
この時、遥かの山の中腹から、一点の火光閃めくと見る間に、二点三点十点百点と、さながら百足の這うかのように蜒々たる一条の火の帯が南に向かって拡がり群がり、打ち鳴らす太鼓、吹き立てる貝、堂々として押して行く。
砂を蹴立てて一散に
その堂々たる武者押しを討手の勢はあっけに取られてただ呆然と見ていたが、急に伝騎を走らせて彼方の様子を窺わせた。
間もなく伝騎は馳せ返ったが顔には驚きの色が見える。
「武者押しをなす者は何者ぞ※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
討手の大将金藤弥太は気を逸らせてまず問うた。
「甚五衛門殿の一党が弓鉄砲に前後を固め、領地中津川の方角を指して押し行く処にございます」
「甚五衛門殿もおられたか?」
「鹿角打ったる冑を冠り紺糸縅の鎧を着、十文字の鎗提っさげて、鹿毛なる駒に打ち跨がり悠々と歩ませるその人こそ甚五衛門殿でございました」
「して総勢は幾何ぞ?」