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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

第二の機会

第二の機会

「おい」

「どうした?」

「驚いたな」

「何をそんなに驚いたんだ」

「何をってお前、驚くではないか」

「俺にはちっとも解らない」

「……いや全く仰天した。京都のお公卿さまだと云うじゃないか」

「へえ、何んだい。はっきり云いなよ」

「何さ、例の角太郎さんがさ」

「ああそうか、あの人のことか」

「これには全く驚いた」

「そう云えば俺も驚いた」

「立派な人物とは思ったが、しかしまさかお公卿様だとは、俺ら夢にも知らなかった」

「そうとも、俺らも知らなかった」

「さてお公卿様だと聞いて見ると、なるほどそういうところもある」

「どうも実に威厳があるからな」

「黙っていても威厳がある」

「物を云っても威厳がある」

「それでいてちっとも高ぶらない」

「高ぶるどころか、謙遜なものだ」

「実にどうも奥床しい」

「自然と頭が下がるじゃないか」

「いや全く頭が下がる」

「犬馬の労を尽くしたいものだ」

「俺も実際そう思っている」

「噂をすれば影とやらだ。おいおいあの方がいらっしゃったぞ」

ここは黒姫の水晶山で、昼の休みを人足どもが、あっちに一塊り、こっちに一塊り、世間話に余念なかったが、その話の種と云えば、仮りに角太郎と名を呼ばれた、飛鳥井右京次郎であった。