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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
城中の百物語
城中の百物語
やがて全軍は隊伍を調え、粛々と前進を続けて行く。三留野、坂下、落合川、三つの宿を打ち越えて目差す中津川へ来た時には夜ももう初夜を過ごしていた。
こうして花村甚五衛門は、己が所領の持ち城へこの夜堂々と入り込んだのであった。
爾来、中津川の花村家は、木曽家、伊那家、御嶽冠者、以上三つの敵を相手に合戦しなければならなくなった。四方岩石に囲繞された彼の持ち城苗木城はその構えこそ小さくはあったがその巧妙なる縄張りによって難攻不落と称されていた。
今日も戦い明日も戦い、昨日も落城、一昨日も討ち死に。血腥い噂が天地をこめて人の心を狂わせるのが戦国時代の有様であった。町人も百姓も一人として職に安んずる者はなく産まれ故郷や家をすてて他国へちりぢりに散って行く。
しかし、中津川の城下だけは、花村甚五衛門の支配の下に人も散らず商売も栄え、珍らしい繁昌を見せていた。
土岐津の城主土岐頼金が伊那五郎盛常と、いつか互いに好みを通じ、花村一族の立てこもる苗木の孤城を攻めるという、そういう通信が来た時でさえ甚五衛門は沈着いていた。わずかに日頃好みある岩村の城主に使者を遣わし、事の次第を知らせたばかりで、兵を出そうとさえしなかった。