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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
島君
「好かぬは妾も同じ事、葡萄大谷のお方でも、右衛門さんとは大違い、紋十郎さんは好かぬお方じゃ。そうは思ってもそこは商売、渋い顔ばかりもしておられず、お互いにクサクサいたします」
「妾は人一倍一刻者、厭な人は厭、好きな人は好きと、こうきめて掛かる故か、一層紋十郎さんは嫌いでござんす」花桐は深く眉を顰め、さも厭そうに云うのであった。
「おやそれでは花桐さんには好きなお方がござるのか? 今の言葉ではそうとしか取れぬ。こりゃ面白い、さあ云うがよい、さあ云うがよい。お前は十六になったばかり、恋も情も知らぬと思ったは、どうしてどうして油断が出来ぬの。さあそのお方を云うがよい」千寿はいかにも面白そうに、こう花桐に攻めかけた。
「おお云わいでか、云いましょうとも、妾の大好きなお方はの、葡萄大谷の右衛門さんさ」
島君
ケロリと云って退けられて、千寿は益※(二の字点、1-2-22)驚いた。
「右衛門さんとは滅相もない、今こそ仲違いしているものの、お前の姉分島君さんの、恋しいお方ではござらぬか。そのお方を横取りしようとは、なかなか凄い腕じゃのう」
「何んの妾が横取りなどを……妾が好きと云ったのも、あの親切な島君さんの、元の恋人でござる故、それで妾にも懐かしくそれで好きと云ったまで。