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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
雪を捲く嵐
「そこでもう一つお尋ね致す――見渡すところお手前達はわずか八人よりござらぬが、一切でそれだけでござるかな」
「いいや、なかなかもちまして、吾ら一切の同勢は、一千人を越すでござろう」
「ふうむ」と旅の侍は呻くような声を洩らしたが、「主領はお手前でござろうな?」
「何んの何んの手前如きはほんの小頭の一人でござる」
「しからば主領は何人でござる?」
「お聞き及びでもござろうが、吾ら一千人の主領と申すは、南蛮渡来の法術を使い遁甲隠形飛行自在、まだ弱冠の身でありながら、既に総帥の器を有し、数年前より御嶽山上に砦を設けて武威を張る御嶽冠者と申すお方!」
雪を捲く嵐
旅の侍はこれを聞くと、パッと二、三歩飛び退ざって、刀の柄へ手を掛けた。
「やあやあさては汝らは、かねて聞き及ぶ賊の張本、御嶽冠者の手下なるか!」
「黙れ!」と頭領は怒号した。「賊の張本とは無礼であろう。まこと吾らが主領事、木曽家を怨む事あって兵を集むるとは知らざるか! 打ち見るところ、その方も、眼の配り方胆の据え方、心得ある者と思ったればこそ、今までは言葉を厚うして味方に引き入れんとは企てたれ、今の雑言を聞くからは、もはや一寸も動かぬぞよ!」