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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
荒鷲に化ける
「なるほどあそこに隠れておるの。その方の眼も鋭くなったのう。それでこそ私の秘蔵弟子じゃ……お三婆め、あそこへ隠れて何をいったいする気かな――才蔵、どうじゃ出かけて行ってお三婆を試して見い」
「どうして婆様を試しましょう?」
「お前が才覚するがよい」
「はあてと、何に化けてやろう」才蔵はじっと考えたが、やがてヒラリと縁へ上がり足の爪先をくっつけた。
「お師匠様、お手を願います」
「何、この私に手を拍てとか? お前一人ではまだ駄目かな?」
「むずかしい物に化けますので、私一人では手に負えませぬ」
「よしよしそれでは手を貸してやろう、よいか、それよ、一、二、三!」
才蔵の姿は雲か霧か朦朧として消え失せたが忽ち猛鳥のハタハタという羽搏きの音が縁から起こり、ただ見る一羽の荒鷲が忽然として浮かび出た。
「ははあ鷲に化けおったな」
老人は思わず微笑したが、
「先方が吹矢のお三だというのに鷲に化ける馬鹿があるものか。勝負はこっちの大負けだ」
鷲は二、三度空高く渦のようにグルグル廻わったが、そのまま颯と大楠の木の蔭を目掛けて下ろして来た。
がしかし楠の木の際まで行くと、ヒューッと風を切る音がして電光のように白征矢が、楠の木の蔭から飛んで来て鷲の翼につき刺さった。