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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
如来衛門の義気
老鶯が一しきり藪の方で啼きつづけた。
ケキョ、ケキョ、ケキョ、ホーホケキョ。
三人はいつまでも無言である。そのうちすっかり陽が暮れた。
如来衛門の義気
「お武家様、何となされたな?」
髷の形も玄界の、いかにも凛々しい侠客姿、その大男はこう云って、松の根方に腰かけている一人の武士に話しかけた。
「何も致さぬ。ただ疲労れた」
その若い武士はもの憂げに、顔も上げず云い放つ。
「見ればどうやら病気上がり、一向元気のないご様子――私は長野の権堂で、ちっとは人にも知られた男。忘八屋商売はしておりますが、心は忘八ではないつもりの、如来衛門と申す者……難儀のお方と見たが最後、どうでもお助け致さないでは、この胸の中が納まらない変な性分の者でございます。差し出て無礼とは存じますが、私の廃屋へお立ち寄りなされ、何より先にご病気の保養をなすったらいかがのもので……」
親切を面に現わして如来衛門は云うのであった。
忝けないと云うように武士は頭を頷かせたが「如来衛門殿と申されるか。ようこそ親切に云うてくれた。いかにも拙者は病気上がり。二町の道さえ歩くに難く、篠井よりここまでは歩いて来たが、もう一足も歩かれぬ。