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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

藪原長者

藪原長者

「福島は今日から馬市で、さぞまあ賑わうことだろう」

「福島の馬市も馬市だが、藪原の繁昌はまた格別じゃ。と云って祭りがあるのではないが、藪原長者の抱妓の中に鳰鳥という女が現われてからは、その顔だけでも拝もうとして、近在の者はいうまでもなく遠い他国からも色餓鬼どもが、我も我もと押し出して来て、夜も昼も大変な雑沓じゃ」

「そのように評判のその女、どういう素姓の者であろう?」

「素姓などどうでもよいではないか。容姿さえ美しければそれだけで女は沢山じゃ」

「いやいやもしもその女が、妖怪変化であったなら……」

「妖怪変化? 変化とは?」

「それではお前まだ聞かぬか? その美しい鳰鳥には、聞いただけでも慄然とする咒咀が纏わっておるそうじゃ」

「ふうん、そいつは初耳じゃ」

「と云うのは何んでも夜になると、その鳰鳥は一瞬間、現世から黄泉へ行くそうじゃ。言い換えるとつまり死ぬのじゃな。そうして一旦死んで置いて、それから間もなく生き返るそうじゃ。それが毎晩だということじゃ。なんと恐ろしい女ではないか」

「お前の云うことが本当なら、なるほど恐ろしい女子だが、しかし恐らくその噂は鳰鳥の全盛に蹴落とされた朋輩遊女が口惜しまぎれに云いふらしたものでもあろうかい」