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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
天を焦がす大楠
こう云いながら御嶽冠者はツカツカと楠の木の根もとまで行ったが、「鬼王丸の本身の楠の木の老木にござります」
「いかさま巨木でござるのう」
冠者と並んだオースチン師は仰向いて梢を眺めたが、
「参々亭々たる枝態葉相、これでは生命も魂も宿り、人界に出て交りもしよう。ふうむ、ふうむ」と呻き声を洩らす。
冠者はその間も楠の木の様子を見上げ見下ろしていたが、
「鬼王丸奴は不在でござる」
こう卒然と云ったものである。
「何不在? はて不在とは?」
「鬼王丸奴は楠の木を抜けてどこぞへ参っておりまする」
「ははあさようか。これは困ったな」
「いやかえって好都合でござる」自信あり気に冠者は云った。
「さあ私には解らなくなった。……何故不在が好都合かな?」
「それは他でもござりませぬ。すべて変化と申すものは、本体をさえ失いさえすれば、化身は本体を探しあぐんで自滅するものでござります。……それ故彼の留守を幸い、この楠の木を焼きましたならば鬼王丸奴は刃に血塗らず自然に死ぬでござりましょう」
「いやこれは初耳じゃ。さようなことがござるかのう。……では大急ぎで焼き払いましょう」
「心得申した」
と御嶽冠者は筑紫権六を見返ったが、