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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
お前はここで死なねばならぬ
額からは冷や汗が流れている。
「鳰鳥の落籍、差し支えないな。差し支えなければ、その金で、よろしいように扱かってくれ。夜にならぬ中に連れて出たい」
「差し支えない段ではござりませぬ。しかし一応本人の心も、聞いて見たいと存じますので……」
「なるほど、それはもっともじゃ。では本人にこう云うてくれ、落籍は拙者がするようなものの、拙者から改めて鳰鳥をば、殿の側室に出すのじゃから、その意りでとこう云うてな」
「かしこまりましてござります。本人にとっても大した出世、きっと喜ぶでございましょう」
長者はそわそわと室を出た。
それから間もなく一挺の輿が、頑丈な男に担がれながら、藪原長者の館を出た。深編笠の武士が、輿の後から悠々と、つき添いながら歩いて行く。
輿には鳰鳥が乗っている。
蒼黒い空には無数の星が、宝玉のように輝いて、まだ遅い月は出ていなかった。秋の夜嵐に誘われて、バラバラと木の葉が輿を打つ。武士も輿舁ぎも、輿の中の人も、咳一つしなかった。黙々と一行は歩いて行く。
お前はここで死なねばならぬ
こうして輿も武士も夕暮れの山道に消えてから、ものの半刻も経った頃、雑沓する長者の館の門を、あわただしく潜ぐる武士があった。