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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

利鎌と笄

そのない設計図をあると云って、あの右衛門めを硫黄ヶ滝まで……」

「おお飛ばせたは何んのため?」

「何彼に邪魔なあの男を、硫黄ヶ滝で殺すためじゃわ」

「エーッ」と、驚く島君を、尻目に掛けて嘲笑い、

「離れ座敷に酔い仆れ寝ている筈の俺の手下、実はとうにこの家を抜け出し、右衛門めより先立たんものと今頃は近道を走っていようぞ!」

利鎌と笄

「聞けば聞くほど極悪人! ようもようも計ったな!」島君は今は必死の覚悟、やにわに枝折戸から駈け出した。

「どっこいやらぬ」と引っ捉え、「女の足でこの夜道、しかも険しい山道を、走ったところで間に合わぬ。それより俺の酌でもせい」

捉れた袖を振り払い、「えい、穢らわしい人鬼め! 恋の念力必ず追い付き、右衛門様へ告げねばならぬ!」

また走り出すを引っ捉える。捉れた袖をまた払う。舞踊で固めた身の軽さ。ヒラリと門外へ走り出たが身の軽さに足も軽く、闇を一文字に縫いながら山の方へと走って行く。

やがて姿は消えたのである。

此方右衛門は呼吸せき切って、闇の夜道を走っていた。「十里竹藪」と云われている大竹林の前まで来た時「金よ銀よ! 金よ銀よ! 今に掘り出してやるからの。