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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

残った花桐

葉村の長の下座敷から、今日も優しい今様が、さも悠暢と聞こえて来た。

「やんや、やんや」

と、舞い終えると、座に並んだ者達は囃し立てた。

それは紋十郎の一座であった。葡萄大谷の弓掛部落、その部落の百人長、紋十郎が一味を引き卒れてだだら遊びをしているのであった。

しかし部落の住民などの玩弄物になってしまっては、遊君の値打ちも台なしであるとは云え、この頃の遊君と来ては、徳川時代の山猫芸者、それくらいの価値しかなかったもので、冬木だの錦木だの若紫だのと、名前ばかりは立派であったが、その実諸国からの寄せ集めもので、それもおおかたは人買いの手から転売されて来たものである。まして和佐保の遊君は、葡萄大谷の部落民と船津城下の武士達によって、唯一の財源を得ていたのであったから、彼ら部落民に買われることは、むしろ有難いと云わなければならない。

「やんや、やんや」

とまたひとしきり囃し立てる声が湧き起こった。若くて美しくて精神の優しい、花桐という遊君が、静かに立ち上がって舞い出したからである。

「舞いも囃子も止めた止めた! えい、聞きともない見たくもないわい!」

と、せっかくの興を破壊して、突然叫んだものがある。