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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

忍術問答

「用意と云っても何もない」

二人はそこでまた黙った。老鶯がしきりに鳴き渡る。

「お爺さん」と老婆は真面目くさって、「お前さんどこの生れかの?」

「産れた所はこの日本よ」

「相変らずお前皮肉だの――いつこの土地へ来なすった?」

「今からちょうど一月前」

「いつまでここにいるつもりかの?」

「厭になるまでいるつもりじゃ」

「いつ頃厭になるじゃろう?」

「そろそろ厭になりかけた」

「どうして厭になりかけたの?」

「お三婆というような変な気味の悪いお婆がいて私の庵を騒がすでの」

「それはこっちのいうことだに――私はこの土地生え抜きのもので、この土地の物なら犬でも馬でも、人間であろうと木草であろうと、私の自由になったものじゃ。お前という不気味の爺が来て、どうやら私の縄張りを荒らし廻わるように思われての」

「それはお前さんの僻見じゃよ」老人は白髯を撫でながら、「私にはそんな野心はない。他人の縄張りを荒らしたところで何の利益にもならぬからの」

忍術問答

「口では偉らそうに云っても、現在荒らしておろうがの」

老婆は口を尖がらせた。

「私にはそんな覚えはない」

「なんの覚えがないものか。わざわざ城下へ出て行って、生命の握飯とかいうものを、餓死しそうな人達へ振る舞ってやるということじゃ。