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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

鉄主馬之介の強弓

二人の上使をつくづくと甚五衛門は見廻わしたが、そのままそこへ座を占めた。

「上使ご苦労。いざ仰せられい」

すると鎌之助は会釈して、わざと威厳を作ったが、

「お館よりの上使でござる。甚五衛門殿お座が高い!」

それに続いて紋太夫がさも大仰に云うのであった。

「お座が高うござるぞ、お辷りなされい」

「ナニ座が高いとな? 辷れとな? いらぬ斟酌やめにせられい! ここは拙者の邸でござるわ。どこに坐ろうとこっちの勝手じゃ。それが不都合じゃと云われるなら、上使の口上聴かぬまでじゃ」

大眼カッと見開いて甚五衛門は喝破した。

その見幕に恐れたか二人の上使は眼を見合わせ、言葉もなく控えたが、ようやく鎌之助は勇気を出して、上使の口上を述べるのであった。

「上使の趣きよっく聞かれませい……汝花村甚五衛門事、今度お館の主命を拒み大事の場合に出陣もせず、かえって主君の非を剖き、ご寵愛著しい鳰鳥殿に無礼の振舞い致す段臣下の身として許し難し、よって速かに罪を謝し謹しんで主命を奉ずればよし、しからざる時には反逆と認め執事の職を解くのみならず討手を遣わして命を召すものなり……使者の口上件の如し……いざ返答をなさるよう」