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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
堂上方の公達か
右門はそれを袖で払う。再び鋭い矢声あって、飛び来る征矢をまたふたたび右門は左手で払い落す。
するとその時、館の音楽、忽然として途絶えして、今まで見えていた灯火さえ跡形もなく消え失せたが、闇の中より大勢の者の一度に笑う声がして、後はひっそり静まり返り星空の下に巨大の館が黒々と立っているばかり、人声一つ聞こえない。
堂上方の公達か
「さても怪しい館の様子。吉か凶か気遣わし。どうしたものでございましょう?」
右門は山尾を振り返り、思案に余って話しかけた。山尾はすると眼を閉じて、しばらく念ずる様子であったが、
「ただ今占って見ましたところ、吉凶なかばすとございます。凶と出たらまたその時、何んとか思案するとして、ともあれ館に案内を乞い、一夜の宿りを頼む方がよろしいと思います」
「しからばさよう致しましょうか。たとい凶と出ようとも、ただ斬り払って通るまで。もしまた狐狸の類ならば退治して災を除くまでじゃ」
右門はカラカラと笑ったが、山尾を後ろに囲いながら、静々と玄関へ差しかかった。
「頼みましょうぞ! 頼みましょう!」
右門は慇懃に訪のうた。
「応!」
と奥の方から返辞があって、近づく足音が聞こえて来た。