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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

血吸童子

血吸童子

夜は次第に更けて行った。丑満も既に過ぎ去った。おりから戸外の夜嵐が、ハタとばかりに途絶えたが、池の畔で物を洗う、幽かの水音が聞こえて来た。

と、三太夫が若殿に云った。

「妖怪いよいよ来申したぞ、心を確かにお持ちなされて、万事は老人の指図通り、その他のことは成り申さぬぞ」

「かしこまりましてござります!」

若殿はキッと決心した。

尚も水音は聞こえている。

「あれがすなわち探水知心、人心を探る一伝法じゃ。館の様子を探るのじゃ。それ故吾らは心を凝らして無念無想とならねばならぬ。さあさあ無想におなりなされい」

二人は端然と坐ったまま、虚無の境地に分け入ろうとその眼を堅く閉じたのである。

すると、その時、どこからともなく、人を呼ぶ声が聞こえて来た。

「若殿!」と鋭い人の声!

「誰じゃ!」

と思わず若殿はカッと眼を開いて返辞をした。その瞬間に水音が止み、夜が深々と更けまさった。

「残念のことを致したな。あらかじめ注意をしなかったのはこの老人の不覚であった――ただ今、若殿! と呼んだのは、すなわち敵の法術でござる。そこもとが思わず返辞たので、敵は館のこの中に、吾らのいることを知り申した。