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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
消えてゆく獣の屍
一時に落雷したかのように釣瓶撃ちする鉄砲の音も声々に混って響いて来た。二人は愕然として飛び上がった。飛び上がり立ち縮んだ二人の眼前へそれにもまして奇々怪々の物凄い修羅場が展開された。
猪、狐、熊、鹿の群が谷の八方の山々から幾百となく現われて一斉に鋭い悲鳴を上げ、谷を目懸けて球のように転がり落ちて来るではないか!
幻でもなければ夢でもない! 今一匹の大熊が、脚に弾傷を負いながら、既に血迷った見えぬ眼で、数馬に向かって飛びかかった。と、数馬は身を反し、素早く太刀を引き抜いたが、切り付ける間さえあらばこそ、どこからともなく矢声がかかって、一閃、ピカリと光ったかと思うと、熊の月の輪に征矢一筋、背頸まで貫いて立っていた。
消えてゆく獣の屍
おりから今度は仔牛ほどもある、荒れ狂った一頭の手負い猪が、氷の川を一刎ね刎ねて武兵衛目懸けて襲って来た。頸の逆毛を針のように立て、射られた一眼に矢を折り掛け、二振りの剣と見惑うような二本の牙を喰いそらして雷光の如く突いて来た。
「どっこい!」
と、武兵衛はそれを見ると、体を一方へ捻ったが、片脚を上げて猪の腹を砕けよとばかり蹴り上げた。