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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

如来衛門

聞こえないけれど熱心に彼女はそれを聞くのであった。

彼女は仮死の状態から、現実のこの世へ立ち帰った。全身に汗が流れている。その汗を拭いて、すやすやと、彼女は今度こそ本当の快い眠りにはいって行った。

遠くで鶏鳥が一声鳴いた。と、次々に鳴き立てたが、夜はなかなか明けなかった。

如来衛門

それはある宵のことである。

藪原長者は棍棒を提げ、若党下僕を無数に連れて、荒れた虎のように喚きながら、館の内外を探し廻わった。

「己れ逃げようとて逃がすものか。こう門口を閉めたからは、袋の中の鼠じゃわい。さあ如来衛門出てうせろ! 尋常に姿を見せるがいい! 汝は泥棒か家尻切りか、他人の館へ忍び込み、大事な女を盗もうとは、それでも達者かそれでも達者か!」

長者の我鳴る嗄れ声は、階下から階上から塀外まで、恐ろしい権幕で鳴り渡った。

しかし隈なく探しても、如来衛門もまた白萩も、その影さえも見えなかった。それから三日三夜その間、尚厳重に調べられたが、やはり姿は見えなかった。

剛情の長者も諦めたか、四日目の朝から館の門は、自由に人を通すようになった。

その夜の深更のことである。鳰鳥の室に立て廻わした金屏風の蔭からその白萩と如来衛門とが現われた。