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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
四四本丸
彼らは今朝青母衣組の者から、忽然襲撃された時まで、不覚と云おうか迂濶と云おうか、大鼠山の鬼王丸のことを、実は考えに入れていなかったのである。
脇屋刑部事弾正太夫と、意見の合わないそのために、葡萄大谷は立ち出でたものの、余りに興奮したためか、旅金も持たず地理も調べず、とく部落を抜けようとして、硫黄ヶ滝の絶壁の雪を、犯して登りはしたが、登り詰めた辺りに鬼王丸の住む岩石ヶ城のあることを、はたと忘れていたのであった。
「鬼王丸こそは野武士の頭、一城の主でありながら、附近を通る旅人を捉え、旅人蔵の中へ監禁し、身代金を払えばよし、払わぬ時にはあるいは殺し、または生かして土工となし、苦役に従かせるという事じゃ。もしまた美しい女子を見ると、己が慾をとげた後、人買いに売るとも聞いている。いかに乱れた世とは云え、聞くも恐ろしい鬼畜の振る舞い、折りもあったらば引っ捕らえ神の御教えを説いてやらねばならぬ」
かように日頃からオースチン師は、鬼王丸の所行については、心を悩ませていたのであったに、捉えるどころかかえって捉えられ、今さら、自分達の不覚悟が、恥ずかしく口惜しく思われるのであった。