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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

八尺豊かの大入道

不思議のことには暗夜であるのに四辺の闇とは関係なく女の姿ばかり鮮明りと暗さに浮かんでいるのであった。女は年頃十八あまり、頭には黄金の烏帽子を冠ぶり腰に細身の太刀を佩き、萌黄色の直垂を着流した白拍子のたけた姿である。

女はやがて静々歩いて銀杏の古木へ近寄ったが、

「お夏様、お夏様」と呼ぶのであった。

すると銀杏の根もとから不意に白光が閃めいたが、

「小女郎様でございますか。ハイハイすぐに参ります」と若い女の声がした。

それから間もなく銀杏の根もとの洞穴の中からスラリとばかりに一人の女が立ち出でた。

八尺豊かの大入道

それはしおらしい町娘姿で、顔にはしたたる愛嬌がある。もの云いなども穏しく権というものが少しもない。

「これは小手抜小女郎様、ようこそおいでくだされました。そして法蔵寺鈍二兵衛様はまだおいでではございますまいか」

お夏はこう云って会釈した。

「おやまあそれでは鈍二兵衛様はまだおいでではございませぬか。千反林の小石塚から私はずっとここへ参って実戸の方へは寄りませんでした。どうせ周章て者のあの人のことゆえ私より先に西小寺の方へきっと参っていることと思ってそのままお誘いしませんでしたが、こんな塩梅なら実戸へ寄ってお誘いすればよかったものを」