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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

そのため敵は用心して、近寄って来るに相違ない」

老人の言葉の終らぬうち、室に置いてある蘭灯の火影が、見る見る中に暗くなった。

「如法暗夜の火取り虫を、室へ窃かに忍ばせたと見える」呟くと共に三太夫は、ハーッと息を吐き出した。と見よ火影は次第に明るみ、室は真昼のそれかのように、以前にも優して輝いた。

如法暗夜の妖術が、三太夫のために破られたからか、吹き止んでいた夜嵐が忽然として吹き起こり、板戸を揺する騒音が耳を聾するばかりである。その物音にまぎれながらそれとは異なる物の音が――人間の歩く足音が、タッタッタッと聞こえて来た。それが雨戸の前まで来る。と驚いたかのように立ち止まった。

「一枚雨戸が開いているので、案に相違しているのでもあろう」三太夫は心でこう思った。「一枚開けた雨戸の隙からはいれるものならはいって見よ」三太夫は嘲笑った。

戸外の物音は暫時の間、そよとの気配も示さなかったが、やがてすり足でもするような大地を擦る音がした。とその瞬間、火薬の匂いが、プンと臭覚を襲ったが、忽ち轟然たる響きと共に、室の襖がハタハタと仆れ、廊下の床の一ヵ所から、天井を目掛けて一道の火焔、竜蛇のように立ち昇った。