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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
手燭の光がポッと射して、間もなく現われた男を見れば六十前後の老人である。
「どこからお出でなされたかな?」
その老人は年にも似ず若々しい言葉付きでまず訊いた。
「私事は旅の者、足弱を伴うておりますが、思わず路を踏み迷いほとほと難渋いたしてござるが、願わくばお館に一夜の宿りを所望いたしたく存じまして、罷り出でましてございます」
「それはさぞお困りでござりましょう。しばらくお待ちなさりませ、主人の承諾を受けましてから、どこへなとご案内いたしましょう」
老人は一旦引っ込んだが、すぐに姿をあらわした。
「さあさあお上りなさりませ。洗足の湯も取らせましょう。猿若猿若湯を持って来いよ」
言葉につれて十二、三の、少年が一人あらわれた。右門と山尾は足を洗い、老人に案内されながら幾間も幾間も打ち通り、奥の座敷へ導かれた。座敷には円座が敷かれてあり、短檠の火がともっている。
「どうぞお寛ぎなさるよう。何はなくても晩食の物、すぐにお備え致しましょう」
老人はそのまま引っ込んだ。
間もなく絹擦れの音がして、美しい腰元が珍味を盛った、器を捧げて現われた。
「何はなくともまず一献、お過ごしなされてくださりませ。