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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「公孫樹のお夏というからには、女に化けるに相違ない。素晴しい美男の拙者参って、あべこべに狐めを誑かそうぞ」
「よろしい拙者も参るとしよう」
「しからば僕もお同伴いたす」
飛鳥左近吾はそれを見るとカラカラと笑って手を振った。
「成らぬ成らぬ、それは駄目じゃ。そのように大勢で行こうものなら、出かかった狐めも引っ込んでしまう。何んで化け比べなどするものぞ。それよりお互いに鬮を引いて、二人ずつ行くことにしようではないか」
「いかさまこれはもっともじゃ。それでは鬮を引くことにしようぞ」
紙を引き裂いて紙縒とし、数十本の鬮を作り、一人一人それを引いて行った。
木村常陸介と山尾とが、ちょうどその鬮にあたったのである。
「これはこれは常陸殿と、山尾殿とが当ったそうな。これは似合いのよいご夫婦。さあさあ新婚で参られよ」
客将達は手を拍ってこの人選を喝采した。
「しからばとにかく我々二人、出かけることに致しましょう」
常陸介は苦笑を浮かべながら山尾の顔を見守った。
山尾はいくらか恥ずかしそうにホンノリ頬を紅に染めて、無言で天守を下りるのであった。
やがて常陸もそれにつづいて天守を下へおりて行った。