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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

狐は血を吐いて

武兵衛は常陸のその言葉を黙ってじっと聞いていたが、やがて横手をハタと拍った。

「それでは三匹の狐めが『はだか武兵衛が来ぬように』『はだか武兵衛に聞かせるな』と唄っていたとおっしゃいますか? それは確かでございましょうな? ふうん、それにしても狐めはどうして私のこの力を――熱のある一切の病気ならきっと癒して見せるという、自分にも解らぬこの力を、どうして知っていたものか、ほんとに不思議でございますなあ……それはそれとして、お二人様に、土下座までされて頼まれたからには、私にとっては男冥利、一つ立派に頼まれましょう。その狐めの通力と裸体武兵衛の『肉の力』とどっちが勝つか力比べ、立派にやって見せましょう」

こう云うと武兵衛は立ち上がって、春夏秋冬の風雨に晒し鍛えに鍛えた筋肉の隆々と盛り上がった胸の辺りをハタと片手で打ったのである。

狐は血を吐いて

「なんというお偉い方であろう、裸体武兵衛というお方は。あれほど暴威を揮っていた得体の知れない熱病が、あのお方がご城下へ現われてからは、またたく間に勢いを潜めて、病人はドシドシ本復する。新しい患者は出なくなる。ほんとにほんとにはだか武兵衛様は何んというお偉い方であろう」