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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
「何が可笑しいかと仰せられても殿のご前へ出ていながら下帯一筋の赤裸! 無礼とや云わん笑止とや云わん、これを笑わぬ人達こそかえってお咎めを受くべき筈。この玄斎の笑うたのに何んの不思議がござりましょう」
こう云って肩肘を怒らせたのは、頭を青く剃りこぼち袈裟を纏った大入道で、これぞ飛礫の名人として浪人組の中にあっても相当上に立てられる男。しかし酒癖の悪いのと喧嘩早いのとが傷になって、今ではどうやら朋輩からも嫌われている一人であった。
「さては武兵衛の赤裸がそちにはどうやら気に入らぬ様子、一応もっともには聞こえるが、しかし武兵衛の赤裸こそ我らにとっては値打ちなのじゃ。この山国の冬の初め、寒風凛冽と吹く中を単衣さえ纏わぬ勇気あればこそ病魔も恐れて立ち去ったのじゃ。武兵衛における赤裸はその方達における鎧冑、すなわち身を守る道具なのじゃ」
こう訓するように説かれても旋毛の曲った玄斎は納得しようとはしなかった。
「殿には武兵衛がお気に入りゆえさようのことも仰せらるる。せっかくの殿の仰せ故これはこれとしてまず差し置き、どうしても我慢出来ぬことがこの拙者にはござり申す。