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つたかずらきそのかけはし

蔦葛木曽棧

国枝 史郎

「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页

青空文庫

「不倶戴天の父の仇故!」

数馬は意気込んで云い放した。修験者はじっとその顔を鋭い目付きで瞶めたが、ウムと深く頷いて、

「そういう深い事情がござらば尋ね求めるが当然でござる。袖摺り合うも他生の縁、しからば拙者手引き致して坊主之助と引合わせ申そう」

「さようなればご貴殿には坊主之助をご存じか?」

「敢て一人坊主之助と云わず、花村甚五衛門家臣とある限りは、ことごとく動静は詳かでござる」

修験者は熱ある口調をもっていかにも堂々と云い放し、裸体武兵衛へ眼を向けた。

「さて、今度は裸体殿じゃ。そなた何処のお産まれじゃな?」

武兵衛はにわかに笑い出し、さも磊落に答えるのであった。

「産まれ在所もまた親も拙者はさっぱり知り申さぬ」

「これは不思議の答えじゃの。が、しかしそれはともかくも、何故に衣裳を纏わぬぞ」

「私の体はいつも熱く、着物着るのはかえって迷惑、それで年中裸体でござるよ」

「さてさて徳の体じゃの――して姓名は何と云うぞ」

「姓はござらぬ。名は武兵衛じゃ――年中裸体でいるために、裸体武兵衛と云われています」

それを聞くと修験者と荒武者はいかにも驚いたというように急に言葉を改めた。