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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
それからは双方対陣したまま仕掛けようとはしなかった。
冬の長い夜も次第に明けて、東の空が紅くなり、横雲に華々しい光が射し、そして日輪が昇り始めた頃、はたして初めて両軍は、戦いの気勢を上げたのであった。
「それから恐ろしい混戦になり、坊主之助を取り遁がしたのだ」
数馬は山路を里ある方へ一人苦しそうに歩きながら昨日からの事を考えた。
彼は昨日の戦いが混戦になるのを待ち構えて花村方の陣へ入り、坊主之助を付け狙った。
そうしてようやく枯林の中で、はたと二人が顔を合わせた時、数馬は宣りを上げたのであった。
宣りを上げられて坊主之助は、ハッと当惑したらしかったが、さすがに彼も勇士であった。
「いかにも昔、汝の父を、武士の意気地で殺害はしたが、討ちつ討たれつは戦国の常、悪事をしたとは露思わぬ。とは云え汝の身と成って見れば、我を仇と狙うももっとも、勝負しようとなら勝負しよう。したが一つの相談がある。我の得物はこの飛礫じゃ。これを十個だけ打ち掛けようぞ。その中たとえ一個でも汝の体に当たったなら、我より技倆の鈍い証拠。一旦別れて修行をし、その上再び立ち合いしよう。一つも当たらぬその時は、我より汝が勝った証拠。