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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
拙者。その際余儀ないご懇望により鉱山の長としてこの地に止どまり、殿に臣事しているとは云え、いわば賓客の身分でござるに、お手討ちなんど遊ばすが最後、伊予との同盟忽ちに破れ、国の乱れとなるは必定! それでもお手討ち致さるるか? よもやお手討ちはなりますまい!」
まさに神采奕々として、梟雄弾正太夫をさえ、叱し去らん勢いである。
弾正太夫はややしばらくオースチン師を眺めていたが、やがて太刀を鞘に収め、二足三足退いた。
「いかにもさようでござったの。気ままには手討ちにも致されまい。とは云え用捨は尚ならぬ――賓客の礼もこれまでじゃ! いざ伊予の国へお帰りあれ」――手を上げて戸口を指すのであった。
「心得申した。おさらばでござる」オースチン師はこう云ったが、弾正太夫を静かに眺め、「失礼ながら置き土産として、設計の絵図面を差し上げ申す。骨を刻み肉を削ぎ、苦心に苦心を重ねた図面、かかる図面は愚老の手でももはや二度とは出来ますまい……この絵図面を基として、硫黄ヶ滝のあるあの地方を根よく発掘遊ばしたなら、恐らく鉱石は昔にも増して産出致すでござりましょう」
こう云いすてるとツカツカと戸口の方へ歩み寄った。