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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
こんな所へ今時分、お前のような若い女が何用あって来たものか、もしや狐狸ではあるまいかと、窃かに案じていたのだが、父親石右衛門の代理というならちゃんと符調が合っている。それよろしいか開けるぞよ」
ガタンと閂の音がして狐格子はガラガラと開いた。
ひらりと飛び込んだ娘葉末、素早く四辺を見廻わしたがじっと市之丞に眼をつける。
と、やにわに手を延ばし、青竜二郎の太刀を抜いた。
「やや待て待て、未だ早い! 鐘の鳴るのが成敗の合図じゃ……」
あわてて止めるのを尻目にかけ、油断を窺い繊手一閃、ザックリ肩を割りつけた。
「わッ」
と仆れる青竜二郎、葉末はツッと――走り寄り市之丞の縄をブツブツと切った。
「さ、お逃げなさりませ! ここにおっては浮雲うござんす」
ぐいと腕を取り肩にかける。
「どなたでござるか存ぜねど、忝けのうござる!」
と弱り果てた声で、こう市之丞は云いながら、肩にすがりヨロヨロと社殿の内陣から外へ出た。
螺旋階段
戸外は暗々たる闇である。
夜明けんとする一刻前の文様も解かぬ夜の山を、肩に縋りつ縋られつ、二人の男女は辿って行く。
社を離れて三町余り、闇にも著く鬱蒼と茂った杉の林まできた時に、二人は精根を使い果たし転がるように腰を下ろした。