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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
私ことは鬼王丸の家臣玄武三郎にござります」
こう云いながら眼を走らせ、廊下の壁によりかかりながら尚昏々と眠っている白虎太郎を見付けると驚いたように眼を見張った。
「いや何、これは何んでもござらぬ」老師は透かさず誤魔化しにかかる。「先ほど太郎殿参られて、酒宴の席へつらなるよう愚老にお進めくだされた上、案内致そうと申されてな、ここまでお連れくだされたが連日の劇務にお疲労れと見え、居眠り致しておるのでござろう。――白虎太郎殿、眼をさましなされい!」
声に応じて白虎太郎は眠りからパッと眼をさましたが何が何やら解らないと見えて四辺をキョロキョロ見廻わしている。
「玄武三郎殿ご苦労でござる。しからばご案内くだされい」老師はやがてこう云った。真相の露見が恐ろしいので、早く太郎と別れたいのであった。行列は再び動き出した。鉤の手になっている長い廊下を右の方へはいって行く。それは婚礼の行列であって花嫁姿に装った芳江姫の美しい姿が列の先頭に立っている。
オースチン師と数馬とは、行列の後から従いて行った。
婚礼の座敷と定められたのは、すなわち本丸北寄りの広間で巨大な窓から大鼠山の高い嶮しい峰が見える。