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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
焚き連らねられた篝火のため式の場は煌々と輝りかがやき、ズラリと居流れた人々の衣裳の皺さえ見えそうである。
オースチン師と数馬とは、設けの席へ招ぜられたが、そこは儀式の席上からは左側に当たっていて、一人しょんぼり坐っている芳江姫の後ろ姿がすぐ眼の前に見えている。
老師は数馬に囁いた。
「皮肉の奴は鬼王丸じゃ。愚老の手より盗み出した姫と、婚礼するさえ不届きなのに、その有様を見せようため我らを席上へ招くとは……婚礼の儀式の始まらぬうちにどうぞして姫を奪いたいものじゃ」
数馬は、すると刀柄を叩き、
「いかがでございましょう躍り出て姫を奪い逃げましては、追い縋る者はこの数馬が必ず叩き切ってお目にかけまする」
「奪って逃げるは易いにしても四四本丸のこの城から城外へ出ることはむずかしい。まずもう少しく様子を見て、……それにしても武者所鬼王丸めはどこに何をしているのであろう?」
二人はひそひそ囁き合いながら機会の来るのを待っていた。
短い夏の夜は次第次第に暁近くなって来た。窓から見える山上の空がやがて水色に色付いたが、間もなくそれが黄色になり、忽然暁の鐘の一声が鮮かに広間にまで聞こえて来た。