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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
やや突っ込んで訊いて見た。
「それも貴殿と同じでござるよ。すなわち名前は左陣でござる」
こう云いながらその侍は調度の方へ手を延ばしたがヒョイと煙管を取り上げた。スパスパうまそうに煙草を呑む。
人丸左陣の心の中は一種の怒りで充たされようとした。さてはこの俺を嘲弄しているな! つまりこのように思われたからだ。
「ほほう、左陣と仰せらるるか。世には同名の人もあり、決して不思議とは存じ申さぬが、姓は何んと仰せられまするかな? よもや人丸とは云われますまいのう。……」
左陣はグイと度胸を据え、かえってこちらからも嘲けるようにこう云ってカラカラと笑って見せた。と、その気味の悪い笑い声は暗鬱たる処女林に鳴り渡り、三倍ほどもある反響となって彼の耳へそのまま返って来た。すると、それに驚いたものか、傍の檜木の空洞から梟が一羽飛び出した。ハタハタハタハタと羽搏きしながら森の隙間を翔け廻わっていたが、またスーッと帰って来たかと思うと空洞の中へ隠れ去った。
「おお姓をお尋ねなさるかな。さよう。人丸とは申しませぬわい。……某の姓は天丸でござる。すなわち天丸左陣でござる」
同じく寛々として云ったものである。