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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
「講談雑誌」博文館、1922(大正11)年9月~1926(大正15)年5月<br>よき夫婦、復讐とげられる、右京次郎団、兄妹邂逅大団円「現代大衆文学全集 第六巻 国枝史郎集」平凡社、1930(昭和5)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 335,908 字 · 669 页
名状しがたい威力
で彼女はこの日頃、自分の不在を知らせずに、つまり彼女は依然として城中大奥にいるものと城中の者に思わせておいて、しかも一人だけこっそりと抜け出す方法はあるまいかと、その工夫に耽ったものである。
しかるに偶然今日になってその方法が目付かった。
彼女酷似の踊り子を彼女そのものに仕立て上げ、換え玉として城内へ残し、彼女だけ抜け出そうというのであった。
名状しがたい威力
夜は次第に更けて行き、踊りはいよいよ盛んになった。
娘お六も興に乗って、手振り品やかに踊り続けた。
と、その時彼女の耳もとでこう囁く声がした。
「面白いことがございます。こっちへおいでなさいませ」
驚いて彼女がそっちを見ると、ご殿女中が笑いながら、手で彼女を招いていた。お六は何がなしに恐ろしくなったが、ご殿女中であって見れば、会釈をしなければならなかった。そこで彼女は輪を離れ、ご殿女中の方へ寄って行った。
すると美しいご殿女中は、ちょっと頤でしゃくるようにしたが、
「こっちへこっちへ」と云いながら、人浪を分けて歩き出した。そこでお六も云われるままに、彼女の後から従いて行った。
踊りの庭を出外れると、森と寂しい空地であったが、その空地を突っ切ると巨然たる館の前へ出た。